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素人劇団で女形を演じました
坊子機務段にはいろんな人がいました。なんと素人ながら脚本書いて演出も手がける人が・・・。
その人を中心に「アカシア劇団」を編成して、年に数回兵隊さんを慰問していました。
私も着任早々劇団に組み入れられ、女形の役が割り当てられました。
はじめはものすごく抵抗があって躊躇したのですが、一番若いからと、否応なしに・・・
衣装は妻帯で着任している先輩の奥さんが提供されていました。化粧もその奥さんにして貰いました。
眉を描いたり口紅を引くときは手がふるえるからと、胸をぴったり合わせての作業です。
どっきとしましたがお任せです。いつの間にか自分でも化粧が出来るようになっていました。
はじめのお芝居はコミカルものが殆どで、服装や化粧は当時の娘さん風。
かわいい! と評判でした。ある時一人の将校が楽屋に入ってきて
「君 どこの娘?(どこのお店で接客しいてる娘の意味)」 咄嗟なので
「僕ですか?」 の返事に「・・・???」その将校は黙って出て行きました。
「私ですか?」 って女らしく返事してたら、その将校に抱いてもらえたのに って。
あとでみんなんで 大笑いしました。
私の娘役は、観客からは本当の女だと思われていたようです。
女形を超えて女優?としての評価を得ていたことには 満足です。
本格的なお芝居にも取り組みました。題して「軍国子守歌」です。
概略は 乳飲み児を抱えて、出征した夫、その留守を守る健気な妻の姿。
やがて夫の戦死。白木の箱に入った遺骨を抱き一人になってから泣く妻の姿。 です。
私は、乳飲み児の私をかかえ病没した父の遺骸に取りすがったであろう母のの姿を想像して
精一杯にその妻の役を演じました。300人は入る小さな土間の芝居小屋。びっしりの兵隊さんや民間人。
観客の中からすすり泣きがいっぱいに聞こえてきました。終わりには日頃いかめしい部隊長も
ハンカチで目を拭っているのが見えました。私も本当に泣きながら演じていました。|
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