長年きたえた じまんのうでで 打ち出すすきくわ 心こもる
おぼろ月夜
菜の花畠に 入日うすれ 見わたす山の端 かすみふかし
春風そよ吹く 空をみれば 夕月かかりて にほひ淡し
里わの火影(ほかげ)も 森の色も 田中の小路を たどる人も
蛙のなくねも かねの音も さながらかすめる おぼろ月夜 |
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冬げしき
さぎりきゅる みなとえの 船に白し あさのしも
ただ水鳥の 声はして 今ださめず岸の色
からすなきて 木に高し 人は畑に むぎをふむ
げに小春日の のどけしや かえり咲きの 花もみじ
浜辺の歌
あした浜辺を さまよえば 昔のことをぞ しのばるる
風の音よ 雲のさまよ よする波も かいの色も
夕べ浜辺を もとおれば 昔のことをぞ しのばるる
よする波を もとむれば 月の色も星のかげも
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誰か故郷を想わざる
花つむ野べに 日は落ちて みんなで肩をくみながら
唄をうたった 帰へりみち おさななじみの あの友この友
ああ 誰か 故郷を思わざる
一人の姉が とつぐ夜は 小川の岸で さみしさに
泣いた涙の なつかしさ おさななじみの あの山あの川
ああ 誰か 故郷を思わざる
早春賦
春は名のみの かぜのさむさや 谷のうぐいす 歌は思へど
時にあらずと 声も立てず 時にあらずと 声も立てず
氷とけ去り あしはつのぐむ さては時ぞと 思うあまねく
今日もきのうも 雪の空 今日もきのうも 雪の空
夏はきぬ
うの花のにおう 垣根に ほととぎす 早もきなきて
しのびに もらす 夏はきぬ
さみだれの そそぐ山田に さおめが もすそぬらして
たまなえうえる 夏はきぬ
雨降りお月さん
雨降りお月さん 雲のかげ お嫁にゆくときゃ 誰とゆく
一人でからかささしてゆく からかさないときゃ 誰とゆく
シャンシャラシャンシャン鈴つけた お馬にゆられて ぬれてゆく
急がにゃお馬よ 夜があける 手綱のしたから ちょいと見たりゃ
おそでが夜つゆに ぬれている おそでがぬれても 干しや乾く
雨降りお月さん 雲のかげ お馬にゆられて ぬれてゆく
茶つみ
夏も近づく 八十八や 野にも山にも 若葉が茂る
あれに見えるは 茶つみじゃないか あかねだすきに菅の笠
日和つづきの 今日この頃は 心のどかに つみつみ歌う
つめよつめつめ つまねばならぬ つまにゃ日本の茶にならぬ
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荒城の月
春高楼の 花の宴 めぐる盃 かげさして
千代の松が枝 わけいでし むかしの光 いまいずこ
秋陣営の 霜の色 鳴きゆくかりの 数見せて
ううるつるぎに 照りそいし むかしの光 いまいずこ
いま荒城の 夜半の月 かわらぬ光 誰がためぞ
垣に残るは ただかずら 松に歌うは ただあらし
天上影は かわらねど えいこは移る 世の姿
うつさんとてか 今もなお ああ荒城の 夜半の月
赤とんぼ
夕やけ小やけの 赤とんぼ 負われて見たのは いつの日か
山の畑の 桑の実を 小かごにつんだは まぼろしか
十五でねえやは 嫁に雪 お里のたよりも 絶えはてた
夕やけ小やけの 赤とんぼ 竿の先
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牧場の朝
ただ一面に たちこめた 牧場の朝の きりの海
ポプラの並木の うっすりと 黒いそこから 勇ましく
鐘がなるなる カンカンと
もう起きだした 小舎小舎 あたりに高い 人の声
きりにつつまれ あちこちに 動くひつじの いくむれの
鈴がなるなる リンリンと
いまさしのぼる 日の影に 夢からさめた 森や山
赤い光に 染められた 遠い野末に 牧童の
笛がなるなる ピイピイと
背くらべ
柱のきずは おととしの 5月5日の 背くらべ
ちまきたべたべ兄さんが 計ってくれたせいのたけ
きのうくらべりゃ 何のこと やっとはおりの紐のたけ
柱にもたれりゃ すぐ見える 遠いお山も 背くらべ
雲の上まで 顔だして てんでに背伸び していても
雪の帽子を ぬいでさえ 一はやっぱり富士の山
黄金虫
こがね虫は 金もちだ 金くらたてた くらたてた
あめやで水あめ かってきた
こがね虫は 金もちだ 金くらたてた くらたてた
子どもに水あめ なめさせた
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雨ふり
あめあめふれふれ 母さんが じゃのめでおむかい うれしいな
ピッチピッチチャップチャップ ランラン
かけましょ かばんを 母さんの あとからゆこゆこ かねがなる
ピッチピッチチャップチャップ ランラン
あらあらあの子は ずぶぬれだ やなぎのねかたで 泣いている
ピッチピッチチャップチャップ ランラン
かあさん ぼくのを かしましょうか 君君このかささしたまえ
ピッチピッチチャップチャップ ランラン
ぼくならいいんだ かあさんの 大きなおかさに はいってく
ピッチピッチチャップチャップ ランラン
りんごのひとりごと
私は真っ赤なりんごです お国はさむい北の国
りんご畑の晴れた日に 箱につめられ汽車ぽっぽ
町の市場につきました りんごりんごりんご
りんご可愛いいひとりごと
くだもの店のおじさんに お顔をきれいにみがかれて
みんな並んだお店先 青いお空を見るたびに
りんご畑を思い出す りんごりんごりんご
りんご可愛いいひとりごと
今頃どうしているかしら りんご畑のおじいさん
箱にりんごをつめながら 歌をうたっているかしら
りんごりんごりんご りんご可愛いいひとりごと
かもめの水兵さん
かもめの水兵さん ならんだ水兵さん
白い帽子白いシャツ白い服 波にチャプチャプうかんでる
かもめの水兵さん かけあし水兵さん
白い帽子白いシャツ白い服 波にチャプチャプうかんでる
かもめの水兵さん なかよし水兵さん
白い帽子白いシャツ白い服 波にチャプチャプうかんでる |
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かわいいかくれんぼ
ひよこがね
お庭でぴょこぴょこかくれんぼ どんなに上手にかくれても
黄色いあんよが 見えてるよ だんだんだあれがめっかった
すずめがね
お屋根でちょんちょんかくれんぼ どんなに上手にかくれても
茶色の帽子が 見えてるよ だんだんだあれがめっかった
こいぬがね
野原でよちよちかくれんぼ どんなに上手にかくれても
かわいいしっぽが 見えてるよ だんだんだあれがめっかった
通りゃんせ
通りゃんせ通りゃんせ ここはどこの細道じゃ
天神様の細道じゃ ちょっと通して下しゃんせ
ご用のないもの 通しゃせぬ
この子の七つのお祝いに おふだをおさめにまいります
行きはよいよい帰りはつらい こわいながらも通りゃんせ通りゃんせ
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かごめかごめ
かごめかごめかごの中のとりは いついつでやる
夜明けのばんに つるとかめとすべった 後ろの正面だーれ
ふじの山
あたまを雲の上に出し 四方の山を見下ろして
かみなりさまを下にきく ふじは日本一の山
青そら高くそびえたち からだに雪のきものきて
かすみのすそをとおくひく ふじは日本一の山 |
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鯉のぼり
いらかの波と 雲の波 重なる波の中空を
橘かおる 朝風に 高く泳ぐや鯉のぼり
開ける広きその口に 舟をも呑まん様見えて
ゆたかに振う尾びれには 物に動ぜぬ姿あり
もも瀬の滝を登りなば たちまち竜になりぬべき
わが身に似よやおのこ子と 空におどるや鯉のぼり
海
松原遠く 消ゆるところ 白帆のかげは浮かぶ
ほしなみ浜に高くして かもめは低く波にとぶ
見よ昼の海 見よ昼の海
島山やみにしろきあたり いざり火 光あわし
ある波岸にゆるくして うら風かろくいさご吹く
見よ昼の海 見よ昼の海 |
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冬の夜
ともし火ちかく衣(きぬ)縫う母は 春の遊びの楽しさ語る
居並ぶ子どもは指を折りつつ 日数かぞえて喜び勇む
いろり火はとろとろ外は吹雪
いろりの端に 縄なう父は 過ぎしいくさの手柄を語る
居並ぶ子どもはねむさをわすれて 耳をかたむけこぶしを握る
いろり火はとろとろ外は吹雪 |
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もみじ
秋の夕日に照る山もみじ こいもうすいも数ある中に
松をいろどる 楓や蔦は 山のふもとのすそもよう
谷の流れに 散りゆくもみじ 波にゆられてはなれてよって
赤や黄色の色さまざまに 水の上にもいるにしき
水あそび
水をたくさんくんできて 水てっぽうであそびましょう
一、二、三、四 しゅっしゅっしゅう
てるてる坊主
てるてる坊主てる坊主 あした天気にしておくれ
私の願いを聞いたなら あまいお酒をたんとのます
てるてる坊主てる坊主 あした天気にしておくれ
それでもくもってないてたら そなたの首をちょん切るぞ
鞠と殿さま
てんてん手鞠てん手鞠 てんてん手鞠のてがそれて
どこからどこまでとんでった 垣根をこえて屋根こえて
おもての道へとんでった とんでった
おもての行列なんじゃいな 紀州の殿様お国入り
金紋先箱ともぞろい おかごのそばにはひげやっこ
毛槍をふりふり やっこらさのやっこらさ
てん手鞠はてんころり はずんでおかごの屋根の上
もしもし紀州のお殿さま あなたのお国はみかん山
わたしに見させて下さいな くださいな
おかごは行きます東海道 東海道は松並木
とまりとまりで日が暮れて 一年たっても戻りゃせぬ
三年たっても戻りやせぬ 戻りやせぬ
てんてん手鞠は殿様に 抱かれてはるばる旅をして
紀州はよい国日の光 山のみかんになったげな
赤いにかんになったげな なったげな
夕やけ小やけ
夕やけ小やけで日が暮れて 山のお寺に鐘が鳴る
おててつないで皆かえろ 烏と一緒に帰りましょう
子どもが帰った後からは 丸い大きなお月様
小鳥が夢を見る頃は 空にはキラキラ金の星 |
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仲よし小道
仲よし小道はどこの道 いつも学校へみよちゃんと
ランドセル背負って元気よくお歌をうたって通う道
仲よし小道はうれしいな いつもとなりのみよちゃんと
にこにこあそびにかけてくる なんなん菜の花 匂う道
仲よし小道の小川には とんとん板橋かけてある
仲良く並んで腰掛けて お話するのよたのしいな
仲よし小道の日暮れには 母さんお家でお呼びです
さよさよならまた明日 お手手をふりふりしょうなら
桜井の決別
青葉茂れる桜井の 里のあたりの夕まぐれ
この下影に 駒とめて 世の行く末をつくずくと
偲ぶよろいの袖のえに 散るは涙かはた露か
正成涙を打ち払い 我が子正行呼び寄せて
父は兵庫におもむかん かなたのうらにて討ち死にせん
いまはここまで来つれども とくとく帰れふるさとへ
父上いかにのたもうの 見捨てまつりし我ひとり
いかに帰らん帰られん この正行は年こそは
今だに若かれもろともに 御ともつかえぬ死出の旅
今しおここより帰へざるは 私がわたしのためならず
おのれの討ち死になさんには 世は尊氏のままならん
早くおいたち大君に つかえまつれよ国のため
この一振りはいにしとて 君のたまいしものなるぞ
この世のわかれの形見にと いましにこれを贈りてん
ゆけよ政行ふるさとへ 老いたる母の待ちまさん
共に見送り見返りて 別れおしむおりからに
わかのふりくるさみだれの 空に聞こゆるほととぎす
だれかあわれと聞かざらん あわれちになくその声を
浦島太郎
昔昔浦島は 助けた亀に連れられて
龍宮城へ来てみれば 絵にもかけない美しさ
乙姫様のごちそうに 鯛やひらめの舞い踊り
ただ珍しくおもしろく 月日のたつのも夢の中
遊びにあきて 気が付いて おいともごひもそこそこに
帰る途中の楽しみは みやげにもらった玉手箱
帰って見ればこはいかに もといた村も家もなく
道に行き会う人々は 顔も知らない者ばかり
心細さに蓋とれば あけてくやしさ玉手箱
中からぱっと白けむり たちまち太郎はおじいさん
野 菊
遠い山から吹いてくる 小寒い風にゆれながら
気高く清く匂う花 きれいな野菊うすむらさきよ
秋の日差しを浴びて飛ぶ トンボをかるく休ませて
しずかに咲いた野辺の花 やさしい野菊うすむらさきよ
霜がおりてもまけないで 野原や山に群れて咲き
秋のなごりをおしむ花 明るい野菊うすむらさきよ
たき火
垣根の垣根の曲がり角 たき火だたき火だ落ちばだき
あたろうかあたろうよ 北風ピーピー吹いている
さざんかさざんか咲いた道 たき火だたき火だ落ちばだき
あたろうかあたろうよ しもやけお手手がもうかゆい
ころがしころがい寒い道 たき火だたき火だ落ちばだき
あたろうかあたろうよ 相談しながら歩いていく
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お山のお猿
お山のお猿は鞠がすき とんとん鞠つきゃおどりだす
ほんに お猿はどうけもの
雨
雨が降ります雨が降る 遊びにゆきたし傘はなし
紅緒のかっこも緒が切れた
雨が降ります雨が降る いやでもお家であそびましょ
千代紙おりましょ たたみましょ
雨が降ります雨が降る けんけん小雉がいま啼いた
小雉も寒かろ さびしかろ
雨が降ります雨が降る お人形寝かせてまだ止まぬ
お線香花火もみな炊いた
青い目の人形
青い目をしたお人形は アメリカ生まれのセルロイド
日本の港についたとき いっぱい涙を浮かべてた
わたしは言葉がわからない 迷子になったらなんとしょう
やさしい日本の嬢ちゃんよ
仲良く遊んでやっとくれ 仲良く遊んでやっとくれ
七つの子
烏 なぜ啼くの 烏は山に 可愛い七つの子があるからよ
可愛い可愛いと烏は啼くの 可愛い可愛いと啼くんだよ