「いのち長き時代に」

(1997.02.05)
 朝日新聞の連載記事の中に、
 23年間、病気とたたかった奥さんを介護された方(73才)の記事が載っていました。

 それは48才の時に、脳こうそくで倒れ、
 右半身が動かなくなり言葉の大半を失った奥さんが4年間の入院の後、
 自宅で19年間、一昨年71才で亡くなられた。

 奥さんを家に引き取られて間もなく、同居のお母さんが狭心症になり、
 5年後81才で亡くなられた。

 お勤めだったので、朝5時に起きて2人の朝食と昼食用意し、帰宅してから夕食の支度。
 夜奥さんの身体を蒸しタオルで拭く、それから掃除と洗濯、布団に入るのは深夜、が日課。
 疲労が朝まで残り、あかない瞼を指で引っ張った。
 食欲が無くなり、毎日2合のお酒を飲みながら夕食を胃に流し込む、体重72sが50sに。

 福祉施設のショートスティから帰って病人が無表情だった手記や、
 ディサービスに送迎が必要と言われて、利用をあきらめた。
      ※京都では送迎されています。

 最期の意識不明になったとき、23年間病気とたたかってきた奥さんに、
 もう「がんばれ」とは言えなかった。

 「望んでした介護では、勿論ない。
    でも介護を通じてしか分かり合えなかったであろう「妻」が、
    いま、心の中に生きている」

  と
 子どもさんがないので、一人での23年間、私よりはるかに長い間の「主夫」です。
 励まされました。 そして、結びの言葉は痛いほど…、納得です。

 14年半 生きようとがんばっている 妻。 私 気力を新たにしました。


 ご飯は絶対お米のご飯 

 
 今晩のご飯、おかず何を作ろうかなーって、
 いつも考えながら今日までどうにかやって来ました。

 妻の食事は、朝の目覚めが遅いので、今では昼と晩の2回が習慣です。
 食事に要する時間は普通1〜2時間、好物のお寿司だと30分くらいで…。
 ところが近頃はものすごくかかるようになりました。毎食4〜5時間はざらなんです。

 先日、昼食を終わったのが夕方6時近くなので、
 晩の食事はケーキでいいだろうと思っていたら、
 それをゆっくりゆっくり食べたあとの 夜10時頃
 「私 お食事は?」
 「さっきケーキ食べたでしょう あれであかんの?」
 「私 お食事してません」
 「もう10時だよ」
 「何時でもいいです ご飯食べます」

 実はその晩、妻の食事の支度しなかったんです。
 あわてて近くのフードショップに走りました。

 妻の食事はお米のご飯。他はご飯じゃないんです。昼食にパンは食べても、
 晩ご飯は絶対お米のご飯。ケーキじゃ代用品にならなかったのです。

 それから2時間、少し箸を付けただけです。
 「疲れたやろう もう寝ようか」
 「うん 」
 「おやすみ」

 先ほどのご飯に執着していたのは何だったんでしょう ベッドを倒して電気を消し、
 テーブルの食事をそーっと下げました。納得したのでしょうか もう目をつむっています。

 最近は、お茶碗は持ち難くなったのかあまりすすまないので、もっぱらお握りです。
 それでも積極的には口に運ばない、そのくせ介助を好まないのでお好きなようにって感じ。
 今では昼食と晩ご飯の時間、境目が殆ど無くなりました。

 私が娘にその話しをしているのを、
 横で聞いていた今年一年生になった孫
 「泰子さん 病気なんだから… 僕 甘えん坊(経口介助)してあげようか」

 ついこの間まで、妻のベッドをジャングルジムのようにして遊んでいたのに、
 病人をいたわるまでに成長したのか と思う。


 介護保険法  

 
 5月23日、この法案が衆院を通過した。

 私は今まで、病気があってそれを治療しそのあとの養生を支えるのが介護、
 いわゆる介護するのは治療の延長だから医療保険で全てが賄えるものだと思っていた。
 ところが翌日の各新聞の報道や解説を見て、
 どうやらそれはいささか違うらしいということを知った。

 病気治療は医療保険で賄い、あとの療養を支える介護は
 介護保険を設けてそれで賄うのだと言う。
 病気治療と療養は別物だ と。私には割り切れない。

 介護保険法によれば
 40才以上になったら月平均2500円の保険料が徴収される。

 これで将来介護をしてもらう立場になったとき、誰でも利用出来るかと言えばそうではない。
 認定を受けなければならないからだ。その程度と状況によっては断られる。
 幸い認定がパスして公的介護を受けられた場合でも、
 かかった費用の上限を29万円としてその一割と超過分が自己負担。

 公的介護の主なものには
 在宅サービス
  ・ 訪問介護=ホームヘルパー による、食事・排泄介助 や家事の補助
  ・ 訪問看護
  ・ 訪問叉は通いによるリハビリテーション
  ・ ディサービス=施設で一日食事や入浴など
  ・ ショートスティ= 施設で短期間預かる
  ・ 福祉用具の貸与= 車いすやリフト
  ・ 住宅改修費の支給

 施設サービス
  ・ 特別養護老人ホーム
  ・ 老人保健施設
  ・ 療養型病床群
 などがある。

 医療保険は病気になれば誰でも利用できるのに、
 この介護保険は認定にパスしなければ利用できない。

 私の場合
 訪問看護と訪問入浴サービス以外は全部私が処置している。
 家族で介護が出来る場合は、認定にパスしないようだ。
 たとえ公的介護が受けられなくても、私なりの努力で、妻を一日でも長く守りたい。